「ゴリラのモノマネをして」と言われたら、ほとんどの人が胸を叩く動きをするだろう。
ゴリラ=胸を叩くというイメージは、それほどまでに私たち人間の脳みそにこびりついている。
では、このゴリラが胸を叩く行為=ドラミングには一体どんな意味・理由があるのだろうか?
ゴリラが胸を叩いてドラミングをする意味・理由
ゴリラが胸を叩きドラミングをするのは、戦いを避けるためである。
ドラミングによって大きな音を立て、自分の存在、そして自分の気持ちを伝えることによって、実際に拳や牙を交える事なく戦いを終わらせようとしている。
いや、そもそも戦いが起こらないようにしているのだ。
巨体のゴリラ同士が戦うとなると、当然どちらか、もしくはどちらも大きなケガを負うことになるだろう。
そんな戦いを無用なものとして、なるべく避けるためにゴリラは胸を叩くのである。
またこのドラミングは、他の群れに自分たちの存在を知らせるためにも使われる。
周りに自分の存在を知らせ、お互いに不用意に近づきすぎないようにしているのだ。戦いが起こらないように。
しかしゴリラのドラミングは、戦いを避けたい場合以外に、メスに対してもおこなわれることがある。
この場合はメスに自分の強さを示し、自分に興味を惹きつけるためにおこなうとされている。
ちなみに、ドンキーコングなどのキャラクター化されたゴリラは拳を握って力強く胸を叩くが、実際のドラミングの際は手のひらを開きパーにした状態で胸を叩く。
その方が音が響きやすく、遠くまで広がるからだ。
ゴリラのドラミングはなぜ大きい音が出る?ドラミングの仕組み
私たち人間がいくら胸を強く叩いても、ゴリラのように大きな音は出ない。
ではなぜ、ゴリラたちはあのように大きな音を出すことができるのだろうか?
その秘密は、ゴリラが持つ特殊な器官にある。
ゴリラは喉に共鳴袋と呼ばれる器官を持ち、それは子供から大人になるにつれてだんだんと成長していく。
大きく息を吸い込み、この共鳴袋を膨らました状態で胸を叩くことで、「ポコポコポコ」という大きくてキレイな音を出すのだ。
メスゴリラや子ゴリラもドラミングをおこなう
敵に遭遇したときや危険を察知したときにドラミングをするのはオスゴリラだが、メスや子ゴリラもドラミングをすることがある。
子ゴリラは、群れの仲間を遊びに誘う時によくドラミングの真似事をする。
また、子ゴリラ同士が小高いところに交互に上ってドラミングを見せつけ合う「お山の大将ごっこ」という遊びをすることも分かっている。
大人であるオスゴリラの背中を見て育つ子ゴリラは、ドラミングに憧れがあるのかもしれない。
なおメスや子ゴリラは共鳴袋が発達していないため、ドラミングをしてもあまり大きな音はならない。
ゴリラのドラミングには手順がある
そんなゴリラのドラミングには、ちゃんとした手順がある。
- 体や首を横に振りな口をすぼめてフーホーという高い音を出す(=フーティング)
- 小枝などを口に咥える
- 後ろ足で立ち上がる
- 辺りにあるものを投げる
- 胸を叩く(ドラミング)
- 辺りにあるものを蹴る
- 突進する
- 辺りにある木や草を引きずる
- 地面をたたく
これがドラミングの一連の流れとされている。
もちろん毎回これら全てをするわけではない。また最初のフーティングは、成熟したシルバーバックのみが発する。
ゴリラの発見とドラミング
ゴリラ発見時、ゴリラの胸を手のひらで叩く「ドラミング」を初めて見た人間は、驚いて銃を発砲しゴリラを殺してしまった。
そしてドラミングをするゴリラの暴力的・好戦的に見える姿はゴリラ発見者に深く印象付けられ、さらにその後発見者が本土に戻った後に書いた著書によって、人間のゴリラに対する印象は「好戦的で危険な動物である」と刷り込まれてしまったのである。
またその著書には「ゴリラは森から現れて人間の女をさらっていく」と書かれているようだ。
現実では決してあり得ないこの描写からも、発見者がいかにゴリラを恐れていたかがわかるだろう。
ゴリラとキング・コング
ちなみに、1933年に公開されたゴリラ映画「キングコング」は、そんな暴力的・好戦的な印象のままにゴリラを描いた映画である。
映画監督のクーパーは、この映画でゴリラを悪魔・怪物として描こうとし、作中でもゴリラは残虐で気味の悪い存在であるかのように描写されたようだ。
この映画「キングコング」は、今までに何度もリメイクされている。
ゴリラに対して誤ったイメージを持ったまま作られた初代キングコングを観たいと私は思わないが、2005年のリメイク版「キング・コング」はおすすめだ。
私がゴリラを好きになった理由の一つとして挙げられる映画である。
穏やかに暮らしていたであろう住処を人間たちに荒らされ、さらに見世物にするため人間界に連れ去られた挙句、人間に殺されてしまうゴリラ。
何とも言えない気持ちになって、涙なしには見れない映画である。
「あんなにデカいキング・コングをどうやって船に積んで運んだんだ…?」などツッコミどころも満載だが、血を流しながらも大切なものを守るキング・コングの姿に何度も泣いてしまった。
観たことがない方はぜひ一度観てみて欲しい。
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